消費税の免税事業者の要件の見直し
平成23年度税制改正で、
消費税の事業者免税点制度における免税事業者の要件について、
見直しが行われました。
平成25年1月1日以後に開始する年または事業年度から適用されます。
したがって、3月決算法人の場合は、
平成24年4月から9月の特定期間から免税事業者の判定を行うこととなります。
【改正前】
免税事業者の判定は、
その課税期間に係る基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、
事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)の
課税売上高で判定されます。
基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合には、
その課税期間の納税義務が免除されます。
前々期 900万円 免税
前期 3,000万円 免税
当期 3,000万円 免税
来期 3,000万円 課税
【改正後】
免税事業者の判定は、
その課税期間に係る基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合でも、
以下の場合には免税事業者に該当せず、課税事業者となります。
① 個人事業者のその年の前年1月1日から6月30日までの間の
課税売上高が1,000万円を超える場合
② 法人のその事業年度の前事業年度(7ケ月以下のものを除く)開始の日から
6ケ月間の課税売上高が1,000万円を超える場合
前々期 900万円 免税
前期 3,000万円 免税 ←上期に1,000万円超の場合
当期 3,000万円 課税
来期 3,000万円 課税
また、事業者は課税売上高の金額に代えて、
同期間中に支払った所得税法に規定する給与等の支払額の金額を用いる
ことができます。
(前年又は前事業年度6月間の判定については課税売上高で判定するか
給与支給額で判定するかは、事業者の判断に委ねられます)
もともと、消費税において経費となる仕入控除税額を計算する場合の要件として、
「請求書の保存」と「帳簿の記載」という煩雑な処理が要求されていることから、
小規模な事業者にこのような処理を負わせるのは、
事務負担が過大になるのではないか、という懸念があった為、
小規模と判断できる事業者については、消費税の納税義務を免除することと
していました。
一方で、
免税事業者の場合、最終消費者が支払った消費税の全てが
納税されているのではなく、その分、「益税」になります。
こういった免税措置があるのは消費税だけではありませんが、
消費税が「間接税」であるという性格から、一般消費者の感情としては、
不公平だということになり、この不公平感を払しょくする必要性は以前から
でており、今後消費税率を上げるためにも、今回改正に至ったのだと思います。
とはいえ、この改正は、創業まもない、または、零細の中小企業にとって、
消費税を負担しなければなりませんので、
極めて厳しい改正といわざるを得ません
加えて、
今後、消費税の税率がアップすれば、その痛みは更に大きくなると考えられます。
また、前期の上期の課税売上高についても計算しなければなりませんので、
会社にとってみれば、上期と決算期で2回決算する必要がある、
ということになります
このような取扱いは、納税者に過大な負担となります。
そして、最大の疑問。
課税売上高に代えて給与支払額をもって納税義務を判断することもできる、
としています。
具体的には、役員や従業員への賞与や給与、アルバイトへの給与、
残業手当・休日出勤手当などが給与等の対象となります。
(しかし、この給与等の金額は、実際に支払った源泉徴収の対象となる
給与等の金額が含まれる一方、未払分の給与等の金額は含まれないので、
注意が必要です。)
例えば土地売買を行う会社であれば、課税売上高はほとんど計上されない
一方で、給与支払額は発生します。
このため、納税義務の判定について、現行制度とは全く逆の結論が生じうることが
あります。
そもそも、「消費税」における事業者の規模を判断するのであれば、
「消費税の対象となる取引の規模」で判断することが理論的には正しいはずで
消費税の対象外である給与を、何故、納税義務の判断基準にしたのか
不思議でなりません
簡易課税の届出も、今までは、2年かけて検討出来たのですが、
前期の上半期までに検討しなければならなくなりました。
消費税は、様々な判定基準を適用されたり、自ら選択出来たりします。
この届出一つで納税額の有利不利が決定されます。
今まででも複雑であったのに、後付けでどんどん複雑化していく消費税。
これで平等・公正が保たれるのか疑問です
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